【私教育新聞第133号】学びの場としての新時代の大学|安永卓生氏「知を回す判断力とメタ認知 ―探究を“構造”として教える理由―」

2026.05.22(金)

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【学びの場としての新時代の大学】
「知を回す判断力とメタ認知 ―探究を“構造”として教える理由―」

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知が回らない時代とその背景
 情報化社会の進展とともに、知識は確実に増えている。だが、私たちの学びの場で、知は回っているだろうか。生成AIが正解を高速で導き出す時代にあって、学習者が前提を問い直す営みの時間を確保できているだろうか。
 問い直しの営みが不足しているがゆえに、獲得できる知識が増えているにもかかわらず、SECIモデルで言う「暗黙知と形式知の循環」としての「知が回っている」と実感できる機会は多くない。この理由は、既存の構造をなぞる学びにとどまり、自らの前提を問い直す営みが不足しているからであろう。「守破離」でいえば「型(守)」をなぞる段階に留まりがちである。
 私自身が若い頃、師匠から「科学が生まれる瞬間のもがき」と「既存の学問を学ぶことの容易さ」を教えられたことがある。「既存の構造を理解すること」と、「構造そのものを疑い、組み替えること」はまったく異なる営みである。この「もがき」こそが知を回す契機となると最近になって腑に落ちた。

知が回る構造とは何か
 「知が回る」とは、「自分の理解の立ち位置」を把握し、「何が分かっていないか」を自覚し、「前提」を更新しながら、判断を修正できる状態といえる。たとえば、「振り返り」の問いが適切か、授業中での発問の中で、理解の立ち位置を把握しようとしているか、などである。批判的思考論で知られるRichard PaulとLinda Elderは、思考を目的・前提・根拠・視点・含意といった「要素(elements of reasoning)」として分解し、その質を知的基準によって評価する仕組みを示す。私自身が講義・研修で実践を試みる「ソクラテス的発問」もまた、この思考構造を見える化するための6つの発問の型(明確化、前提、根拠、視点の転換、影響、そして、問いそのものを問う)である。ここでは誤答を訂正する前に、「どの前提からそう考えたのか」と一度問い返すこと。否定ではなくて、「なぜそう考えたの」と拾ってあげること。それだけで、探究や講義は単なる活動から、学習者が自らの前提を振り返る機会となる。

メタ認知と判断力
 さて、私は中学時代、田中光一らが著作した、学習法を解説した「楽勉術」のシリーズを読んで育った。単元ごとのテストであった小学校時代から、中間試験・期末試験という、いくつかの単元をまとめて試験をするようになった段階で、私に「効率の良い時間の使い方と勉強の仕方」を教えてくれた。今振り返れば、それは学び方を問い直し、学習の構造を提示することを試みた本だったといえる。
 そこには、「単に覚える」のではなく……

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